Project category
Architecture
Use
house
Year
2020
Location
Takasaki

T/K邸

 

 

群馬県高崎市の、住宅や水田が広がるのどかな場所に建つ2世帯住宅の計画である。
子世帯住居は、たくさんの家具や絵画や、食器やオブジェが置かれ、生活も変化に富む。なので、いくつもの色や、タイルなどの装飾的な要素を空間の各所にちりばめ、空間の豊かさが高まるように考えた。色や図柄は、ところどころで転用され各デザインに影響をおよぼす。タイルの絵柄が洗面所の鏡の輪郭を形作ったり、三角形の小窓がアクリルゴールドミラーの天井飾りに置き換わったり。それらは、家具や食器、絵画やいろいろな生活の側から持ち込まれるモノと混じり合い、一体となって空間の彩りを豊かにする。いろんなアイテムが空間に拡散することで、建物と家具やモノや服が、それら属性を超えて、色や図像として軽やかに漂うような「状況」をつくろうとした。

一方、親世帯住居は、長年の生活の中で揃えられた、味わいのある家具や備品等々が既にあり、それに似合うであろう先行したイメージもある。生活に流れる時間もゆったり、静かで穏やかである。装飾ガラスからの抽象化された光が、やさしく床に落ち、傾斜天井をなめらかに光がまわり、または影をつくる。肉厚な建具枠は空間に重さを与え、同時に角は丸くおおらかに面取りすることで、若干の柔らかさを生む。モノトーンの内観に光と影が静かにあらわれるような素朴な「雰囲気」をつくりだすことを意識した。

敷地の南側に、まとまった庭を設けた。各世帯は、この庭に沿って並んで配置されることで、両世帯が庭を眺めることはできるが、各々の世帯間では見合うことがない関係性にある。この配置によって、常にお互いの生活が意識されてしまうのではなく、選択的につながることができる。と同時に、この庭は、対比的で全く異なる質をもつ各世帯が、唯一共有する景色となる。今後、住まいながら整えられていく庭は、そこに咲く花や、鳥たちのさえずりや、虫の鳴き声によって、空間の質の違いを超えて、同じ土地の中にともに住まうということを気づかさせてくれるだろう。このような、庭を介して繋がる関係性が、世帯を結ぶ距離感として丁度良いと考えた。

用途:2世帯住宅
場所:群馬県高崎市
設計協力: DN-Archi(構造)
造作家具製作:ニュウファニチャーワークス
撮影: 木暮伸也、SSA